平成20年度研究事業
パナソニック エコテクノロジーセンター株式会社(PETEC) 視察報告


作成:浜松ホトニクス(株)製品管理統括部 環境・計測グループ 赤堀伸二 様

1.はじめに

平成20年度研究事業として、11月7日(金)に兵庫県加東市で家電リサイクルを行っているパナソニック エコテクノロジーセンター(株)(PETEC(ピーイーテック))へ総勢12名で視察に行きました。浜松駅から大阪駅間を新幹線、大阪駅からPETEC間を貸切バスで移動した視察会となりました。

本施設は「観て、聞いて、ふれて、学べる体験型施設」として紹介されており、家電リサイクル法*の施行に伴い、日ごろ利用していた家電が廃棄後、どのようにリサイクルされていくかが目の前にて確認できるよい機会を得ることができました。

2.施設概要

・所 在 地:兵庫県加東市佐保50番地

・資 本 金:4億円

・事業開始:2001年4月1日

・敷地面積:38,570m2

・使用済み家電製品の処理台数実績:テレビ、エアコン、洗濯機、冷蔵庫・冷凍庫 約70万台/年

・グループ:Aグループ

PETECは、美しい自然が広がる兵庫県加東市佐保にあるため、環境保全設備も充実していました。集塵装置でクリーンな空気を保つとともに、工場排水は水処理装置を通してから下水へと排水し、振動や騒音対策としては、防音室や防振型の機械設備を完備していました。

各リサイクルラインは、テレビはピンク、洗濯機はブルー、エアコンはオレンジ、冷蔵庫はグリーンと、商品ごとに明るい色合いでカラーリングしていました。これは、工場見学者に対する配慮や働く人の作業の効率化と事故防止のために、そして明るい気持ちで働けるようにという思いが込められているとのことでした。

見学コースには、地域の小中学生が多く訪れ、環境学習の生きた教材としても使われているようで、廊下には感想文、新聞記事の紹介、夏休みの研究発表などが張り出され、地域とのコミュニケーションが大切にとられておりました。

3.家電リサイクルの概要
 PETECで回収されたガラス素材は、再び新しいテレビのブラウン管へ。鉄・銅・アルミなどの金属素材は、再び新しい商品の部品材料へ。多種類のプラスチックは、洗濯機の台枠、冷蔵庫の底板、公園のイスやテーブル、住宅建材(断熱材)、文具小物などへと生まれ変わります。

(1)テレビ
  テレビの重さのおよそ6割は、ブラウン管のガラスの重さであり、その素材は前面にある透明な‘パネルガラス’と、
 背面にあって鉛を含んだ‘ファンネルガラス’の2種類です。この2種類のガラスを無駄なく高純度で取り出すことがテレ
 ビをリサイクルするための大きなポイントであり、PETECでは、このブラウン管ガラスのうち98%をリサイクルしてい
 ます。


(2)エアコンのリサイクル

エアコンには、鉄、銅、アルミなどの金属部品がたくさん使われています。たとえば、エアコンの室内機と室外機の間をつないでいるパイプは銅製、頑丈なコンプレッサは鉄製、冷媒の冷たさや熱さを空気に伝える熱交換器にはアルミ板が使われています。これらの金属を、鉄・銅・アルミという種類別にうまく分けられるかどうかが、高純度な素材を効率良く取り出すためのポイントです。取り出された鉄は、再び新しいエアコンのコンプレッサ部品として使われます。銅とアルミも、再び素材として利用されています。


(3)冷蔵庫のリサイクル

冷蔵庫のボディに使われているのは、多量の鉄。また冷蔵庫の他の部品には、鉄の他にも銅やアルミなど多くの金属が使われていて、全体の重さの約6割を占めています。これらの鉄・銅・アルミなどは、全て素材として再利用されています。次に多いのがプラスチック素材です。冷蔵庫の内装やトレイのほかに、断熱材に使われているウレタンフォームも繊維状のプラスチック。ウレタンフォームを断熱材として発泡させるときにはフロンが使われているため、ウレタンフォームに含まれているフロンもきちんと回収し、密封したまま専門の処理工場に運ばれて無害化されます。


(4)洗濯機のリサイクル

洗濯機の重さのおよそ半分は鉄ですが、他にも銅・アルミ・プラスチックなどたくさんの素材が使われています。中でも分別が難しいのは、鉄の次に多く使われているプラスチック。しかし、種類の違うプラスチックが混ざってしまうと、再び原料として使うことはできません。

そこで、これをいかに分別するかが洗濯機のリサイクルのポイントとなります。PETECでは、洗濯機に多く使われているポリプロピレン樹脂(= PP)という種類のプラスチックが水に浮く性質を利用して、純度99.5%のPPを取り出しています。取り出したPPは、再び洗濯機の台枠や洗濯槽の原料として利用します。

5.視察を終えて

私たちが排出した廃家電がどのようにリサイクル処理されていくかを目の前にしました。メーカとしては、リユース、リサイクルしやすい製品設計や再生材料の採用の重要性が、消費者としては環境配慮型設計された製品の購入や長く使用することの重要性が理解できました。一方、まだほとんど新品のようなものがリサイクルされていることについては、テレビのように東南アジアへ流れてしまうとリサイクル事業も成り立たなくなってしまうことも懸念されますが、うまく再利用の道筋もできればと思います。

リサイクル技術としては、常に研究・開発されており、ごまを使ったはんだ回収装置、作業で生じる音を消すためのレーザー加工、テレビブラウン管の高速分割、混合プラスチックのうず潮水流選別などそのアイデアや技術には感心させられました。また、工場としては、作業環境、安全性、作業効率など細かに配慮された環境であったと思います。

最後にこの視察会を企画してくださった社団法人静岡県産業環境センターの皆さん、ありがとうございました。昼食は、藤の坊「さんだ山荘」にておいしく味わいました。


*家電リサイクル法・・・2001年4月施行。一般家庭や事務所から排出された家電製品(エアコン・テレビ・冷蔵庫・冷凍庫・
            洗濯機)から、有用な部分や材料をリサイクルし、廃棄物を減量するとともに、資源の有効利用を
            推進するための法律。消費者は、使用済み家電が発生した際、適正な引渡しを行い、収集・運搬、
            再商品化等にかかる費用を支払う。家電小売業者は、自らが過去に販売した対象機器の引取りと
            買い換えの際に引取りを求められた対象機器を引取り、収集・運搬をする。製造業者は、自らが
            過去に製造・輸入した対象機器の引取りと引き取った対象機器のリサイクルを行う。